製品が市場にくまなく行き渡ること、そして製品開発に完璧主義で臨むこと−この二つが組み合わされば、上位のセグメントで市場の主導権を握れることは間違いない。だがその主導権も、いずれ危うくなることは避けられない。製品が成熟し競争相手が市場で経験を積むに従って、新製品が平凡な商品に成り下がるコモディティ化の危険性が増す。そして優位に立った企業の地位は脅かされ、新戦略を打ち出す必要に迫られる。
コモディティ化は外部要因が引 き起こすプロセスであり、製品の成熟、市場の飽和、産業のダイナミズムに起因する。企業の力でこのプロセスを押し止めることはできない。だが既存戦略の手直しや新しい戦略の採用により、情け容赦のないコモディティ化の進行を食い止めることは可能だ。
まずはコモディティ化にもさまざまな種類があることを認識し、自社の市場で起きているのがどのタイプか見極めなければならない。次に、状況に適した戦略を採用する。コモディティ化の進行を遅らせる方法としては、既存市場を活用する、普及率の低い市場を狙う、新市場を開拓する、ブランド構築や提携などで新たな視点から差別化を図る、などが考えられよう。
自社製品にコモディティ化の兆候が認められても、これらの戦略がうまく実行できれば、製品の弱みを減らし市場に新たな活力を持ち込む機会を探り出せるはずだ。早めに対策を講じた企業は確実に有利な立場を維持できるだろう。現実の世界でこのプロセスがどう進むかを解説するため、ケーススタディでは音声認識技術のコモディティ化を防ぐ可能性を取り上げる。
(24ページ)(著者:Martin
Schwirn) |