企業の気候関連データ

2022年05月

著者:Rob Edmonds

現在、各国の立法府が企業に対して気候に関する詳細な情報の開示を要求しており、このことが、企業データの新しいカテゴリーの出現を促進している可能性がある。そしてその企業気候データは、多くの産業において重要な新しい事業機会を生み出し、新しい重要なテック企業を生み出すかもしれない。

企業の気候関連データ

米国証券取引委員会は、新たな規制を提案し、これが可決されれば、米国上場企業は、排出量の定量化データや気候変動が企業にもたらすリスクの評価など、詳細かつ具体的な気候情報を開示することが義務付けられることになる。英国ではすでに同様の規制が成立し、大手の公共・民間企業や銀行・保険会社を対象に発効している。欧州連合も、近々制定予定の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の中で、大企業に対して気候変動報告を義務付ける予定である。

気候リスクと財務リスクの統合が進み、その結果、気候リスク情報が定量化されたことで、組織の気候会計、報告、リスク管理を支援するソフトウェアや専門企業の新しい産業が生み出されている。企業が排出量を計算し、報告書を作成するためのプラットフォームを提供する企業には、Watershed Technology、Persefoni AI、Sweepなどがある。また、Sinai TechnologiesやGreenlyなどの新規参入企業も続々と登場している。こうした企業は、気候計算プロセスの自動化を進め、排出量削減戦略の具体的な提案を行うことを競っている。どのサービスも新しいデータセットを生成し、ベンダーはデータにデータ分析やAIを適用して付加価値を高めようとしている。

気候変動インテリジェンス企業は、特に気候変動リスクに関する情報を重視している。Cervestのような企業は、データセット、モデリング、AIを使用して、火災や洪水などの気候リスク要因から組織の資産が直面するリスクを予測する。同様の企業には、One ConcernやJupiter Intelligenceがある。

Implications

大企業にとって、気候関連財務情報開示は、コンプライアンスと財務報告の標準的な部分となりつつある。各法域の立法者は、その実施速度に差はあるが、基本的に同じ要求事項に向かっている。このような新しい規則は、気候変動リスクを財務リスクの一部とみなす投資家の間で、気候変動情報に対する関心が高まっていることを反映している。また、火災や洪水など、気候変動がもたらす物理的な影響がますます拡大しているため、企業も気候変動リスクについてより深く理解しようとする傾向にある。

このような変化により、気候変動データは企業データの新たな主要カテゴリーとなることが予想される。これまでの企業データの新しい波は、SAPやSalesforceといった重要な新しいテック企業の台頭につながった。データ解析とAIは、気候変動の報告を自動化し、最適化することになりそうだ。気候会計の仕組みを提供するサービスの先には、リスク管理、企業のベンチマーク、脱炭素戦略の発見のために新しいデータソースを統合し分析する事業機会がある。(英文)