結核診断のためのCRISPR血液検査

2022年07月

著者:Ivona Bradley

結核は、依然として世界的な死亡原因の1つである。CRISPRを用いた新しいバイオセンサーは、標準的な喀痰検査よりも高い感度で結核を検出でき、診断が困難な患者集団において迅速に結果を得ることができる。規制やライセンスに関する曖昧さが商業化の妨げになる可能性があるが、医療上不可欠な技術であるためリスクは低いと考えられる。

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Tulane Universityの医学研究者らは、結核の原因菌である結核菌(M. tuberculosis)のDNAを迅速に検出する血液検査を開発した。この検査にはCRISPR-Cas12a(clustered regularly interspaced short palindromic repeats-CRISPR associated protein 12a)技術が使われており、30分以内に結果が得られるという。CRISPRが血液・血清サンプル中の遊離結核菌DNAと結合すると、Cas12a が検出可能な蛍光シグナルを発するプローブを切断する。

南アフリカのエスワティニに住む成人および小児73人の結核患者とその近親者の保存血液サンプルを用いて、この検査が成人では感度96.4%、特異度94.1%、小児では感度83.3%、特異度95.5%であることを明らかになった。また、ケニアで結核が疑われるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性の子どもにおいて、従来法で診断されるより数週間早く、確定されたすべての症例と、未確定の症例を85%近く(肺痰に結核が認められない6例すべてを含む)特定することができたという。さらに、CRISPR-Cas12a assayは、治療開始に伴う結核菌のDNAの減少を捉えており、疾患モニタリングへの応用が期待される。

Implications

世界では、毎年約1,000万人が結核に感染し、150万人が亡くなっている。結核の診断、治療、監視を改善するために、多くの研究開発が行われている。標準的な診断検査では、肺由来の喀痰サンプルを使用しているが、その有効性には限界がある。結核患者全員が痰の中に菌を持っているわけではなく、特に小児やHIV感染者はそうではない。血流中に遊離した結核菌のDNAがあれば、万能の診断が可能になると考えられる。特に、医療や研究所のインフラが未整備で早期診断が困難な、農村地域や疾病負担の大きい低所得国での診断が劇的に改善される可能性がある。

世界保健機関(WHO)は現在、結核の診断に2種類の迅速分子検査を推奨している。Xpert MTB/RIF Ultra(Cepheid社製)とTruenat TB(Molbio Diagnostics社製)である。また、ツベルクリン反応検査(Mantoux tests)も数多く販売されている。迅速分子検査は携帯可能で比較的安価だが、WHOは、小児やHIV患者に対する診断上の課題を強調しており、CRISPR-Cas12a assayがこの課題を克服できる可能性がある。残念ながら、CRISPR-Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats-CRISPR associated protein 9)技術に関する法的紛争が続いており、法域によって特許裁定が異なるため、商業化が遅れる可能性がある。しかしながら、規制当局の承認には数年にわたる長い時間がかかること、また、(ヒトの遺伝子組換え以外のCRISPR応用については)肯定的な結果が得られる可能性が高いことから、投資家や開発者は臨床試験を進め、知的財産権が明らかになった時点で技術ライセンスについて交渉することを計画している。(英文)