未来のパンデミックを予測する

2020年11月

著者: Ivona Bradley

Microsoft社のPremonitionは、公衆衛生システムが介入の効果を高め、アプローチのコストを改善できるようにすることを計画している。
Microsoft社は、科学者が天気を監視するように地球のバイオームを監視して、病原体や病気を媒介する動物を早期に発見し、パンデミックに発展するのを防ぐことができる、高度な早期警戒システム「Premonition」を発表した。Premonitionは、ロボットセンシングプラットフォーム、人工知能、予測分析、クラウド規模のコンピューティング、メタゲノミクス(環境サンプルからの遺伝物質の分析)を用いて、蚊を自律的に監視し、環境サンプルを収集し、生物学的脅威となりうる病原体がないか、蚊のゲノムをスキャンして分析する。すでにPremonitionは、80兆塩基対以上のゲノムをスキャンしている。ジカ熱が発生した2016年、Micosoft社は10台のロボット型スマートトラップ(Premitionの前身)をハリス郡(テキサス州ヒューストン)に配備しました。このトラップは、約90%の精度で蚊を識別し、選択的に収集した。Microsoft社とハリス郡公衆衛生局は、脅威をリアルタイムで監視するために、新しいPremonitionシステムの導入を継続する予定である。また、Microsoft社はBayer社と提携し、2040年までにマラリアを撲滅することを目指して、ベクトル制御方式の改善にPremonitionを活用する予定である。

Implications

高度に接続されたネットワーク、かつてないほど強力になった人工知能、そしてますます充実してきたデータベースにより、研究者や専門家は、さまざまな現象を過去に比べてより早い段階で予測することができるようになった。このような予測能力により、ユーザは問題を早期に発見し、問題となる結果を回避できるようになるかもしれない。今後、より多くのデータが幅広い分野で収集されるようになれば、さまざまな応用分野が生まれてくるだろう。膨大なデータベースの調査やゲノム情報の関連付けなど、応用範囲は広く、データベースの大規模化や相互接続に伴って、その数はさらに増えていくだろう。

高度なアルゴリズムや人工知能がますます強力になり、その利用がアプリケーション全体に広がっていくと、恩恵を受ける組織が増えていく。これらのテクノロジーがもたらす業務改善やコスト削減の魅力が、その導入を後押ししている。ヘルスケアや公衆衛生の分野では、自動化技術の利用は、社会的に大きな影響を与えるかもしれない。政策立案者や消費者保護機関は、この分野の動向を注視する必要がある。

Impacts/Disruptions

世界を見渡すと、西アフリカで2013年から2016年にかけてエボラ出血熱が流行し、2015年にはブラジルでジカ熱が流行した。また、コロナウイルスの流行は、世界中で人命を奪い続けている。本稿執筆時点で、世界保健機関(WHO)は、コロナウイルス感染症2019(covid-19)が全世界で115万人以上の死者を出していると報告している。現在進行中のcovid-19のパンデミックは、(過去のパンデミックがそうであったように)科学者が最も効果的にパンデミックに立ち向かうために、どこでどのように介入するかについての理解を深めることが緊急に必要であることを浮き彫りにしている。医療関係者、警察関係者、さまざまな業界の専門家のために、先手を打つことができるアプリケーションの使用は、新たな問題に対処し、公衆衛生を向上させる上で、成功と失敗を分けることになるだろう。(英文)