水素時代

2021年3月

著者: Susan Leiby

世界中の経済圏で、クリーンな水素燃料を生産・利用する事業機会が生まれている。
日本は 2030 年までに年間 1,000 万トンの水素を使用して発電するという目標を掲げている。2050 年までに CO2 ゼロエミッションを達成するための計画の一環として、東京電力ホールディングスと中部電力の合弁会社である株式会社 JERA は、「非効率な石炭火力発電所(超臨界圧以下)をすべて運転停止することとし、高効率な石炭火力発電所(超々臨界圧)でアンモニア混合燃焼の実証試験を実施する」*1。グリーンアンモニアは、再生可能エネルギーを利用した水素の誘導体であり、水素を輸送する際の問題を回避することができる。水素燃料電池は、定置用電源として持続可能性の面でメリットを提供できる。ドイツエンジニアリング大手の Robert Bosch は、英国 Ceres PowerHoldings の固体酸化物燃料電池 (SOFC) 技術を基に、分散型発電所の本格的生産を開始する計画だ。こうした分散型発電所は、都市の発電所、工場、データセンター、電気自動車向け充電インフラでの採用に最適と考えられる。Bosch は、分散型発電市場は2030 年までに 200 億ユーロ(240 億ドル)に成長する可能性があると見積もっている。
*1: https://www.jera.co.jp/english/corporate/zeroemission

交通機関の電化が進むなか、水素燃料電池車の採用を阻む主な要因は、水素供給ネットワークが完全に整備されていない点となる。米国の SempraEnergy は、Southern California Gas Company と SanDiego Gas & Electric とともに、2021 年に、天然ガスグリッドの脱炭素化を支援するため、1%~20%の水素を既存の天然ガスネットワークへ注入する実証プログラムを開始する計画だ。欧州数か国も同様の試験を計画している。水素と天然ガスの混合燃料は、暖房や発電への直接使用が見込まれる。航空産業は中期的に水素が適用される輸送部門の一つだ。オランダ Airbus 社は、水素燃料電池技術に基づく複数の独立した推進システム(いわゆるポッド構成)を特徴とするコンセプト旅客機 ZEROe とその他の水素技術について、2025 年に開発に着手できるか検討を進めている。欧州委員会もまた、最近打ち出したスマートで持続可能なモビリティ戦略のなかで、水素を動力源とする航空機に着目している。(英文)