企業の持続可能性は持続できるか?

2021年3月

著者: Rob Edmonds

新型コロナウイルス感染症(covid-19)により、企業を持続可能で目的主導型にする推進力に変化が生じるだろう。しかしこの変化がどういうものかは不確実だ。

『P1483:株主利益に優先する他の利害関係者の目的』で、「利益を越える目的の理想」に対する企業の関心が高まっていることを指摘し、この関心の高まりの重要な特徴として持続可能性を強調したように、企業の目的について再検討を求める声が続いている。フィナンシャル・タイムズの最近の論説において、Martin Wolf 論説主幹は、著名な経済学者ミルトン・フリードマンが 1970 年に発表した今日有名なエッセー『フリードマン主義: 企業の社会的責任とは利益を増やすこと』で展開している主張は、企業の力が競争、労働、環境、課税およびその他の要因に関する「試合のルール」を歪めてしまったため、もはや通用しないと断言する。covid-19 のパンデミックが持続可能で目的主導型の企業への移行を加速させる可能性を示唆する兆候がいくつかある。ロンドンに本拠を置くCarbon Trust の委嘱による 2020 年 7 月のアンケート調査で調査員は、フランス、ドイツ、メキシコ、シンガポール、スペイン、英国の大手企業に対して 453 件の聞き取り調査を実施した。調査対象企業の 70%以上、そして実際にパンデミック関連の混乱を経験した調査対象企業の 69%が、パンデミックを理由に持続可能性と環境管理を優先させることが「やや重要」または「かなり重要」になると回答した。

合意は予期せぬ側面からもたらされる場合もある。例えば、ロシアの石油化学大手 Sibur Holding のMaxim Remchukov 氏と Denis Rozhok 氏は、パンデミックにより企業は短期利益より長期持続可能性に重点を置かなければならないことを一層認識し始めていると言う。両氏は、その証拠の 1 つとして、2020年に環境・社会・企業統治 (ESG)に配慮している企業への投資ファンドのパフォーマンスが力強いことに注目している。こうしたサインはあっても、結果は確実ではない。パンデミックは医療現場において、使い捨てプラスチック需要の急増を生み出した。パンデミックによる実際の経済的影響はまだ明らかになっておらず、それが明らかになれば、こうした優先順位が変わる可能性は十分にある。失業率が高く、成長率の低い環境になれば、企業、政府および個人は、何よりも短期的な経済的利益を優先せざるを得なくなる可能性もある。打撃を受けた企業が 2020 年夏にはまだ持続可能性を優先していたとしても、パンデミックによる経済低迷期には持続可能性ファーストの戦略が持続できないことが証明されるかもしれない。(英文)