カーボン・リダクション・プッシュプル

2021年9月

著者:Susan Leiby

化石燃料からの脱却は世界的に進んでいるが、それに反対する要因により、脱炭素化を加速させるための取り組みが遅れる可能性がある。

国連の気候変動に関する政府間パネルによると、深刻化する気候災害を抑えるためには、世界はもはやエネルギーシステムの急速な脱炭素化を遅らせることはできない。気候変動がもたらす悪影響についての認識は高まっており、米国をはじめとする規制当局は、上場企業に対し、その企業が抱える環境リスクに関する新たな情報を投資家に開示するよう求めている。また、化石燃料産業が何十年にもわたって隠蔽してきた環境破壊の責任を問う訴訟を提起する米国の都市や州も増えている。しかし、化石燃料産業の利害関係者の強い反対により、脱炭素化の取り組みが妨げられているケースもある。例えば、フロリダ州では、天然ガス会社などの企業の支援を受けて、自治体が新築の建物に天然ガスを引き込むことを禁止することを妨げる法律を最近制定した。他のいくつかの州でも、同様の法律が導入されている。

多くの石油会社は、化石燃料からの撤退を加速させる必要性を認識し、設備投資を大幅に抑制しているが、最近の投資額の減少は非常に大きく、一部のアナリストは、石油生産者が市場のニーズを満たすことができなくなると予測している。covid-19パンデミックからの回復に伴い、原油の需要は増加しており、自動車の大部分は依然として石油燃料を必要としている。エネルギーコストの上昇が生じれば、将来のエネルギー需要を満たすために急速に拡大する必要のある再生可能エネルギーへの移行を遅らせるための政治的解決策を求める人も出てくるかもしれない。

脱炭素化のための強力な経済的インセンティブを生み出すためには、炭素排出量に価格をつける市場システムが不可欠であり、このようなシステムが効果的に機能するためには、高い炭素価格を維持するための政治的コミットメントが必要である。2021年7月、世界最大の二酸化炭素排出国である中国は、二酸化炭素排出量のキャップ&トレード制度を正式に開始した。この制度では、二酸化炭素の総排出量を削減することよりも、炭素利用効率(単位エネルギー(発電)あたりの排出量)を向上させることに重点を置いている。現在はガスや石炭を燃料とする発電所のみが対象となっているが、将来的には他の産業も対象とする予定である。中国は将来の経済発展に備えて柔軟性を確保しようとしているが、専門家の中にはこの制度が十分に意欲的なものであるかどうか疑問視する声もある。(英文)