労働の強化:自動化がもたらす新たな問題

2022年07月

著者:Rob Edmonds

AIによる仕事の部分的な自動化は、労働者が機械と歩調を合わせる必要があるため、労働の強化や従業員の不健康を助長しているように見える。採用難の時代に、AI技術の導入に注力するあまり、人とAIのハイブリッドチームの生み出す結果を最大化するためのワークフローや業務の再設計に注力できていないことが、この問題の背景にあると思われる。

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AIが雇用に与える長期的な影響はまだ不明であり、研究者の予測もさまざまだ。University of Oxfordの研究者らが2013年に発表した論文では、時期は特定されていないものの、米国の仕事の約半分がコンピューター化の影響を受けやすいと推測している。そして、OECDによる2018年の研究では、次のように推定している。OECD諸国の14%の仕事がコンピューター化されやすく、さらに "32%の仕事には50~70%のリスクがあり、自動化の結果、これらの仕事の遂行方法が大きく変化する可能性を指摘している。”

数字がどうであれ、AIによる自動化はすでに仕事を変革し、一部の労働者に大きな変化をもたらしている。熟練者や半熟練者が行う仕事の場合、仕事の役割を完全に自動化するほど、AIは優秀ではないが、AIは人々の生産性を高めることができる(つまり、少人数のグループで大人数のグループと同じ成果を出すことができるようになる)。この現象は、おそらくカスタマーサービスにおいて最も顕著であり、このようなところで従業員は、複数の半自動化されたテキストチャットを同時に管理すれ良い(従来のコールセンターでは、従業員は各顧客を順番に処理している)。

Sarah O'Connor氏は、最近Financial Timesに寄稿した意見書の中で、人々が以前よりも厳しい納期と高いストレスレベルのもとで働くようになったという複数の調査結果を紹介している。O'Connor氏は、顧客や同僚が即座の応答を期待しているという従業員の考えや、部分的な自動化によって従業員が "機械と歩調を合わせる "ことを求められていることなど、この状況の原因を複数主張している。

Implications

おそらく関係者がAIによって雇用が完全になくなる可能性に注目するのは間違っていたのだろう。確かに、歴史的に見ると、機械が排除する仕事の代わりに新たな仕事が生まれるようだ。さらに、AIは少なくとも人間のサポートなしには機能しない。

人間の仕事において、単純作業や定型作業を行うためにAIを利用することが増えている。部分的な自動化は、倉庫や接客業以外の役割にも適用されつつある。実際、AIはすでにパラリーガル業務を行い、医師を支援し、プログラマーのコーディング作業を支援している。このような専門的・事務的な支援を行うソフトウェアは、今後ますますその機能を高め、市場での採用が進むと思われる。

ワークプロセス、作業設計、職場文化は、従業員がAIの欠点を補い、ミスの後始末を永遠に続けることを防ぐ(あるいは少なくとも、従業員がこれらの業務を実行する必要性を最小限に抑える)ために、大幅に再設計する必要があるかもしれない。また、このアプローチは、ハイブリッドチームの可能性を実現できていないとも言える。AIと人間はそれぞれ独自の能力を持っており、どちらか一方が単独で行うよりも、共に行う方が達成できる可能性が高い。管理者が新技術だけに注目するのではなく、人間のパフォーマンスと新技術の両方に注目したハイブリッドチームのモデルを近いうちに開発することが期待される。(英文)