バイオミメティックハンド

2022年11月

著者:Madeeha Uppal

人間の手や腕のような器用さ、強さ、動作能力(親指や手首の回転、さまざまな指の動き、前腕の前屈・後屈など)を持つロボットアームを開発することは、困難なことである。Clone Robotics社は、人間の手のような可動域を実現する、堅牢で高出力のロボットハンドを開発した。

バイオミメティックハンド

Clone Robotics社は、透明な皮膚に覆われた手のようなロボットであり、人間の手と同じ27の自由度を持つ、生体模倣型のロボットハンドを開発した。透明な皮膚は、前腕から指に至る36個の人工筋肉を覆っている。この筋肉は新しいタイプの油圧駆動マッキベン型人工筋肉で、外部のポンプを使って細い網目状のチューブに流体を注入することで伸縮させることができる。しかし、同社では、人工筋肉に強力な発熱体を通し、チューブ内の流体を急速に加熱する方法を採用している。すると、圧力が6倍近くになり、チューブが膨張する。このように、電流を流すだけで、簡単かつ正確にロボットハンドを操作することができるのである。

また、前腕と手にあるさまざまな筋肉にウォーターポンプで圧力を分散させ、それぞれに油圧バルブと圧力センサを搭載したClone Handのプロトタイプも公開している。試作機には、関節角度の情報を中継する磁気センサも搭載されている。筋肉は人間の筋肉の2倍の強度を持ち、65万回以上の耐久性があるのに加え、バルブは100万回以上機能させることができるなど、高い堅牢性を実現している。2022年後半に、Clone Handの最初のベータ版が出荷される予定で、Clone Torso(Clone Handも装着可能)の開発も続けてられている。Clone Torsoは、硬い背骨を持ち、2本の腕と首、肩、腕、胸に120以上の筋肉を持つ予定である。また、人間サイズのTorsoの中に収まるような油圧駆動システムも設計されている。

Implications

技術の進歩や産業界の要望の高まりから、人間らしい動きをするヒューマノイドロボットやアクチュエータ、マニピュレータの研究開発が加速している。例えば、Clone Handは、核廃棄物処理施設、宇宙、危険化学プラント、建設現場など、危険な環境下での遠隔操作に適している。また、家庭での日常的な作業に便利なツールとしても活用できる。Clone Robotics社は、Clone Handは低コストでエネルギー効率よく動作するとしている。

バイオミメティック・ロボットハンドは、単純なロボットグリッパーやマニピュレータと比較して、多くの利点がある。例えば、複雑な環境に素早く適応し、新しい課題にも訓練なしで対応できる可能性がある。例えば、クローンロボティクスのロボットハンドは、人間の手を撮影した映像を使って訓練することが可能である。一方、よりシンプルなロボットマニピュレータでは、そのマニピュレータ専用に、その動きに適した複雑なバーチャルトレーニングシステムを構築する必要があるかもしれない。(英文)